結婚失格/枡野浩一

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「結婚失格/枡野浩一(講談社文庫)」

とても「痛い」小説だった。歌人・枡野浩一が、自分の離婚劇について、設定を多少かえつつも、ほぼそのままに小説化したもの。作者は、ことの顛末を客観的に観察しつつ、同時進行的に物語を綴っている...つもりでいる。

小説という体裁に安心していると、徐々に不安な気持ちになってくる。読み進めていくと、主人公の異様さが行間から滲み出てきて、この物語自体が信用できなくなってくるのだ。離婚したくないと言いながら、妻への愛、子どものへの愛はほとんど伝わってこず、自己正当化の弁明だけが響いてくるようになる。

皮肉なことに、特別寄稿を寄せているの穂村弘と長嶋有によって、作者の異様さは、明確に示される。すなわち、彼は「正しい」ポジションが欲しいヒトなのだ。自分の価値観において「正しい」ということがすべてに優先している。だからこのような小説も書く。結果、妻や子どもが去っていくことも、心の奥でわかっていながら。

そして特筆すべきは、町山智浩による解説。文庫本の解説で、これほど本編を根底から否定しているものをぼくは知らない。よく掲載になったものだ。もちろん、町山なりの「愛情」であることはわかるが、主人公(作者)の考えを厳しく論破している。

結果的に、特別寄稿や作品解説まで含めて、作者の意図するものとまったく逆の方向で、じつに良く「腑に落ちる」という不思議な作品になっている。恋愛下手、結婚生活下手なあなたには必読の書である(反面教師として)。特に男子。

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[memo]
・朝寝坊。今回の黒砂糖はとてもいい出来。
・子供らと図書館。花のピアノ教室。
・「木の実」弁当
・「結婚失格/枡野浩一」★★★★。
・夕方から「祭さいと」へ。ステージの司会は0930のオダマちゃん。ゲストが米良美一。生演奏、生歌による「西都音頭」×3回。ある意味、もっとも豪華なステージ。

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