仕事で、テレビ番組の収録に立ち会うことがある。
お笑い御三家のプロっぷりを目の前で見るチャンスに恵まれたのは、「今」この仕事をしているからであり、本当にありがたいなあと思っている。今日もそんなロケの日。夏の後半に放映予定のバラエティ特番。大御所と、その弟子、中堅の芸人さんたちが、ぶっつけ本番、一発撮りで「ちゃちゃ」っと現場をこなしていく様は、さすがというしかない。
...と思う一方で、こういった収録場面では、テレビという世界の「格差社会」もまたよく見えてしまうのである。格差社会というのは、タレントさんの格差...というより制作側の格差のことだ。テレビ局>制作会社>小規模制作会社、技術会社...という多重構造がなんとも凄まじい。
今日は、雨が降ったりやったんだり、という生憎の天気で、「雨が大嫌い」という大御所のご機嫌をうかがいつつ、当初予定していた場所で収録をするか、見栄えは悪いけれど、室内の某所に移すのかを、ギリギリまで調整したりしていた。空を眺めながら「もつといいなあ」と佇んでいるのは局の人。「両面テープ〜」とか叫びながら、100mダッシュしたり、カメラマンら(ハンディ4台!)の段取りをしているのが制作の人。
タレントさんがロケ車から出て来てくると、収録ポイントまで一緒に談笑しながら歩いているのが局の人。その横から、会話の間隙を探しつつ、「段取りの確認」をしているのが制作の人。
あと着ている服が違うのな。同じGパン姿でも、上着から靴までトータルでコーディネートした結果のGパン、という感じなのが局の人。学生時代からずっと履きつぶしてますという妙な一体感のあるのが制作の人。
まあ、そんな格差も、這い上がって行くための「モチベーションupシステム」であればよいのだけれど(タレントさんの場合は、その機能がある)、テレビの世界は一方的な格差でしかない。我が社というところは、そういった格差がない(上もないが下もない)分、幸せな社会なのかもしれないなあ、なんて思ったりしますた。
<memo>
・図書館で本を一杯借りて来たあと、職場にて番組ロケの立ち会い。
・午後はだらりんこ。
・「ブスの瞳に恋してる/鈴木おさむ(マガジンハウス)」★★。えーっと。まず文章がヒドいな。放送作家ってこの程度の文章で成立するのか。1アイデアがあればいいのかな(確かにタイトルは洒落ているが)。そして妻である大島美幸への愛情があんまり伝わってこないのが期待ハズレ。大島の「奇行」を「愛する」...という場面が多いのだが、そればっかりだとやっぱり「それはネタでしょ」と思ってしまう。そうじゃない「素」の部分をあまりに描いていない。もちろん、ネタもあっていいけれど、大島美幸のキュートな、たぶん、鈴木おさむがホントに好きな部分を照れずに書けば、もう少し読める話になったのだと思う。
・「さびしいまる、くるしいまる。/中村うさぎ(角川書店)」★★★★。再読。ディープな恋愛ものを読みたくて、再び本書を手に取ったのである。エッセイ、というより、私小説である。身を削っている感が凄いのな。自分の感情を論理的に解読しようとすればするほど、いっそう感情に取り込まれて迷走していく。自分を客観視しているようで、主観に翻弄されている。前に読んだときより、より切なさが伝わってきたのは、作者が本書を書いた頃の年齢になったからか。