ハーモニー/伊藤計劃

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「ハーモニー/伊藤計劃」を読了。

ファンタジーな表紙とは裏腹に、中身はとても骨太な「ド・SF」。人類が思い描くユートピアの極限を描いている。

全体に施されたタグ記号、ミャハやトァンといった馴染みにくい登場人物、感情移入しづらい舞台設定など、読者側に課せられたハードルは結構高い(SFファンならいざしらず)。特に前半はなかなか物語に入り込めず、読み進めるのに難儀した。しかも、一部の人物造形は中途半端で、物語の奥行きがもう一つという難点もある。(勝手ながら、病に侵された作者の限界だったかと推察)

それでも、この作品が激しく魅力的なのは、ユートピアの行く末を描き切ろうとする力強い意思に溢れているからだ。過剰な設定なのに力技で納得させられる。そしてこのタイトルが示す恐ろしい世界感。途中で、その意味するところに気がついてからは、怒濤の一気読みであった。すげー。エグ味が強い分、深い余韻が残る作品だと思う。

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[memo]
・監査。予算の記者会見に同席。知事の急な上京によりF社の取材をドタキャン。申し訳ない。合間に文案を練り練り。出張段取。21:30。
・「ハーモニー/伊藤計劃(早川書房)」★★★★。

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