小暮写眞館/宮部みゆき

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講談社創業100周年記念出版 書き下ろし100冊。
物語のすべてが詰まった700ページの宝箱。
あなたは思い出す。どれほど小説を求めていたか。

...厚みが45mmほどもある分厚い単行本の帯には、そういう力強い惹句が踊る。まあ、そういうことなのだ。宮部みゆきの作品というのは。もう「名作」であることが前提であるのだな。ほとんど裏切られることがない希代の高打率作家なのだ。

だから、宮部作品に対する期待感はものすごく高くなる。ぼくも最初に読んだのが「火車」だっただけに、ずーっとあの衝撃への期待感がある。普通の小説を読むのとでは、ハードルが何段階もあがってしまうのだ。たとえば、野球観戦をするのに、バッターボックスにイチローが立っているようなものだ。彼はスーパースターなんだから、普通のヒットじゃない筈(ヒットは打って当たり前)。

ただ、よくよく思い返してみると、ここのところ、小説そのものを敬遠していたこともあって、かなり久しぶりの宮部作品であった(たぶん「ブレイブストーリー」以来)。やはりこの惹句に釣られたんだな。

さて、本作は、4部構成で、大きく4つのエピソードから構成されている。1部を読んだとき「あれ?」と思った。宮部みゆき、衰えたり。この程度の「物語」しか紡げなくなってしまったのだろうか。ちょっとご都合主義っぽい展開も気になったし、登場人物の行動もピンとこない。あれーーー???

...と思ったのは、1部だけだった。2部以降、その不安・不満はどんどん期待感へ変わっていき、4部となればもう...。ああ。さすがだ宮部みゆき。すごいよ。読者が何を期待し、どうやれば魂が揺さぶられるか熟知している。手練手管。そしてまさか装丁にまで大きな仕掛けがあるとは。

そんなこんなで感動にうち震えつつ読了したものの、そこはやはり宮部みゆきだもの。もう少し何かがあってもよかったんではないか、というムチャクチャな欲求不満も感じた。たとえば、それはイチローが第2回WBCの決勝・韓国戦で見せたような、「これぞスーパースター」的タイムリーヒットを、通常のペナントレースで求めるようなものなのかもしれないが。

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[memo]
・本日付で復興対策本部も兼務。PT。頑張るべ。
・ネタ出し。
・「おーい!竜馬/武田鉄矢・小山ゆう」19-23 ★★★。少年向け漫画だからやむを得ないのだろうが、創作部分の話が子どもっぽいのが最後まで慣れず。とはいえ、NHK「龍馬伝」がまどろっこしくて、かといって「竜馬がゆく」を読み直すのも面倒な中、龍馬周辺史をおさらいするにはいい教材だった。小山ゆうの描く竜馬の顔は嫌いじゃない。

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