筆談ホステス

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難聴の女性が「筆談」で接客するホステスになった...という自伝。

聴覚障害の娘をもつモノとして、とても平常心では読めない。癒されたり打ちのめされたり。ああ。ものすごーく高く評価し応援したい気持ちと、ものすごーく厳しく評価したい気持ちの間で激しく揺れ動く本だ。

高く評価したいのは、とても丁寧なわかりやすい文章で書かれていること。とても読みやすい。そして、何より、筆談ホステスになったことも、それを本にしたことも、障害者への認識を促し、障害者の可能性を広げることに繋がっているからだ。すでにドラマ化の話もあるようだし、うまく映像化できれば、さらに障害者と健常者の相互理解が進むことになるだろう。是非是非、頑張って欲しい。

...と思う反面、全編に漂う「キレイ事」感がとても残念でもある。もっと、どろどろした葛藤や、世間的に悪いこともいろいろあったハズで、そういったダークサイドが語られないまま、いわゆる「美談」的に語られることにものすごい「勿体なさ」を感じる。結局、「障害をもったヒトが頑張っている姿」=「美談」というステレオタイプな物語として消費されてしまうんじゃないだろうか。

これは、編集の妙なのだが、本人の文章の合間に、ご両親や昔働いていたスナックのママの談話が挟まれている。この短い談話には、ものすごくリアルな香りが漂う。彼女の人生が一筋縄ではないことがビシバシと伝わってくる。が、その反作用として、「美談」との落差がいっそう際立ってもいる。うーむ。ご両親の思いを考えると、「美談」を語るその口を封じて、「このバカ娘が!」とホッペタのひとつも張り倒してやりたくなる。

んでもでもでも。

やはり、彼女が、彼女なりの価値観のなかで、もがき苦しみつつ頑張って生きてきたんであろうことは伝わってくる。彼女の語りが「キレイ事」なのも、彼女のプライドがそうさせていることなのかもしれない。そう考えると、うーん、涙が出るな。なんだかんだ言って、まだ25歳だかんな。親も辛抱しどころか。聴覚障害者が「筆談」で接客業をやるというのは、どう考えたって、それほど低いハードルではないわけだから。うむ。

...というわけで、とても素晴らしく、とても勿体ないこの本。是非、この夏の読書の一冊にどーぞ。

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...ちなみに彼女が勤める店「銀座クラブM」。
初回お試し価格25000円。
おとといきやがれ!(オレが)

<memo>
・朝から激しい雨。台風の余波。
・国民的美少女の話で盛り上がり。某大使(彦根)来訪。すごいパワー。昼にショッキングなメール。A社が辞退。まじですか。またまた悩ましい日日が続くなあ...。
・「筆談ホステス/斉藤里恵(光文社)」★★★★★。

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このページは、kaishindouが2009年8月 5日 21:27に書いたブログ記事です。

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