海森殿堂 2003.10月ノミネート作品

10/5 そこから青い闇がささやき/山崎佳代子(河出書房新社) ★★★★☆
ベオグラードに在住する作者の、静かな、そして壮絶な「日常」。戦争という圧倒的な暴力に対しても、決して屈することなく、そして喚き散らすこともなく、力強く、自らの武器(詩)を手に戦い続ける姿勢が胸を打つ。そして、ぼくの胸をより強く打つのが、作者の武器が戦争という現実に対して、あまりにも無力であるということだ。その無力さを自覚しつつ、一歩一歩、歩むことが、作者にとって唯一敵(戦争)に抵抗できることなのだ。その積み重ねをきっと「希望」と呼ぶのだろう。それから、表紙絵も素晴らしい。
10/11 サドルの上で考えた/疋田智(東京書籍) ★★★★
同級生の疋田君はやっぱり青臭くて熱い男だ。時代がどんどん軽薄化していくなかで、なんともうざってえ存在だ。でも、彼の確信犯的青臭さは、軽薄になりきれないぼくのようなパンパもんには実に心強いのだ。同年代、同郷、ということも多分にあるのだろうけれども、青臭さや理想主義が新しい可能性を導き出すのかもしれない、という気分がわきあがる。ただ、もったいないのは、こと話が自転車行政の話になると、気持ちが先走りすぎるところだ。今後、自転車問題を前向きに進めていくには本職がテレビ屋である彼は、とてもバランスのいい立場にある。だからこそ、焦らず、自棄にならず、長い目でやわらかく取り組んで欲しい。風はこちらに吹いているのだから。
10/12 インストール/綿矢りさ(河出書房新社) ★★
ブックオフで100円。いくらなんでも可哀相と思いつつ買ったのが、今思えばよかったか。この本の凄さは、たぶんこれを「いたいけな」高校生が書いた、という点に尽きるだろう。やたら過激な表現があるかと思えば、わざと稚拙な部分を見せたりして、なかなか芸が細かい。小憎たらしい。総じてそれなりに面白く読めるのだが、やっぱり超高校生級、という印象から抜けきれない。この本に関しては「著者近影」はちょっと飛び道具だ。
10/26 死刑囚 最後の晩餐/T・トレッドウェル、M・バーノン ★★
晩餐云々より、これだけの死刑囚がいるという現実の方が驚き。ぼくは基本的には「死刑賛成論者」である。せめて死刑への道が残されていなきゃ、遺族の立場があまりに痛い。少なくとも日本では簡単には死刑にならないのだから。死刑制度が内包するモンダイは頭ではわかるのだけれど、「自分が遺族だと思った場合」を考えると、死刑制度は必要悪と思える。犯罪抑止力としての意味なんてあるわけない。もっと遺族の気持ちを大事にすべきと思うのです。
10/31 宮崎の建築と街並み/編・駒見宗信(TKC中央出版) ★★★
職場で回覧されていた本を思わず熟読。なにせ宮崎県内からのみ拾い集めているため、必ずしも「名建築」ばかりではないが、ひととおり有名物件が網羅されているので、眺めているだけでも楽しい。また、冒頭の藤森照信の解説が素晴らしい。歴史の流れのなかでそれぞれの建物のもつ「意味」をわかりやすく説明している。

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