海森殿堂 2003.3月ノミネート作品


3/1 私、Hが下手なんです!中村うさぎ対談集(河出書房新社) ★★★☆
思いのほか、面白かった。中村うさぎのヘタレ具合と、対談相手の豪傑ブリの落差が読みどころか。こういう豪傑の女友達が欲しい。特に、女性AV監督・風吹あんなの「性の戦国武将はかくあるや」ともいうべき、男っぷりのよさが際立つ。この本を読みながら、妄想タクマシクなってしまう36歳・妻子有の自分は、結構素敵である。
*その後、風吹あんなをネット上でチェックしているのだが、相当の豪傑である。その豪傑ぶりがまた、らぶ。
3/2 対話篇/金城一紀(講談社) ★★★☆
哲学書のような装幀に、「なんだあ?」と身構えて読んだのだけれど、淡々と静かな短編集であった。無論、この著者が単に「淡々と静かな短編」を書くわけはなく、それなりに毒も棘もある。主人公達が向き合うものは、ジンセイの深遠であり、その深みとの対話なのだ。なーんてね。
ぼくは、たとえどんな「出来過ぎた話」であろうとも、「なんだってどうだっていいじゃん!Yah!」と、バチバチ弾け飛ぶイキオイいっぱいの物語を求めているのだ、ということを再確認した。ま、勝手に求められても困るでしょうが。
3/3 ブロンソンならこう言うね/みうらじゅん・田口トモロヲ(ごま書房) ★★
7年くらい前の本だけど、ぼんやりとした頭で読むと実におもしろい。15年くらい前(もっと?)に「大学解体新書」という、田中康夫と泉麻人の共著があるのだが、両者の力量の差が歴然としていて、「なぜに共著?」と思ったものである。これも同じ。みうらじゅん最高。
3/8 批評の事情−不良のための論壇案内/永江朗(原書房) ★★★★☆
今の「論客」は、何をどう表現してきたか、ということをわかりやすくガイドしてくれる。取り上げられた44人の論客は、政治・思想からサブカル、文芸に至るまで、実に幅広い。そもそも、相手が「論客」であるだけに、生半可な論理では、太刀打ちできないわけで、著者も非常に丁寧に「論客」の作品を読み、発言をチェックし、そのうえで「こういうヒトなのよ」と示唆してくれる。論客によって、著者の得手・不得手がハッキリしているのも、むしろ誠実性の表れだろう。それにしても、またまた「本を読んでない自分」を深く自覚されられたことであります。
3/10 イラクの小さな橋を渡って/池澤夏樹(光文社) ★★★★
想像力を試される本である。ここに書いてあることは、「イラクにはイラクの人々が住んでいる」という「当たり前」なことだ。我々が、ホントウは知っているハズのことだ。しかし、今こそ、その「当たり前」をしっかりと確認し、この先に何が待っているのか、ということを想像しなくてはならない。むぅ。ただ、残念なことに、視点がイラクに寄り過ぎてて、俯瞰できてないんじゃねえの、と感ずる部分があるため、読みながら少し「シラケ」てしまった。たぶん、タイトルと装丁の「文学趣味」もいけないのだろう。「時機を得た良書」を出版できた作家の自己満足、と言ったら言い過ぎか。ホントウに良書だけにもったいないなあ。まあ、自己満足でも何でもいいから、みんなに読んで欲しい本。
3/13 放蕩記/佐藤正午(ハルキ文庫) ★★☆
こういう変化球も投げるヒトだったのねえ、っていうほどたくさん読んでるわけでもないんだけれども。この物語そのものが、ある意味、奇をてらった「考えオチ」であって、そこんところがどうにも佐藤正午らしいような、でもやっぱりこういうのはらしくないような。
3/14 800/川島誠(角川文庫) ★★★☆
すっげえ面白いっちゃあ、面白い。章の進め方にテンポがあって、かつそれが効果的に使われててリズムがいい。淫靡な部分の瑞々しさ(!)もグー!
でもなあ、キャラがな。ちょっとな。ひとりひとりはリアルなんだけども、全体としてね、集団として、「ありえなーい」と言いたくなるのよね。青春もので、感情移入を阻害する要因があると、ちょっと冷めてしまうのよね。惜。
3/14 ファントム・ペイン/鴻上尚史(白水社) ★★★
20年の活動期間の後、10年間の休止期間に入った第三舞台の最終公演脚本。学生時代に第三舞台に出会い、就職で帰省後も、頑張って東京公演、福岡公演を追っかけていたが、やがて注ぐ情熱に見合う感動を得られなくなっていった(田舎に住んでるツラサよのう)。だから、こうやって脚本だけを追っかけるようになったのだけれど、脚本はあくまで脚本。舞台が見たいよなあ。それにしても、かつてのファンとしては、この「あとがき」がなんとも切ない。
3/16 正義の見方/宮崎哲弥(新潮OH!文庫) ★★★★
夫婦別姓論、宗教論、天皇制など、特段興味のないテーマではある。が、興味がないわりに、著者の論旨にはいちいち「腑に落ちる」ことが多かった。特に「夫婦別姓」について、「別姓こそ、生家中心主義を増長させる」との論は、慧眼、と思う。なーんて、たまには、こういう本を読んで「頭がよくなったような気分」を味わうのも悪くない。
3/17 ドン・キホーテは眠らない/鴻上尚史(扶桑社) ★★★
便所本。SPA!連載のエッセイも8冊目。書く方もすごいが付き合うぼくもすごい(?) かつてトレンド(死語)を語ることの多かった鴻上が、近年、演劇を語ることが多くなってきた気がする。語るべきトレンドがなくなってしまったのか、興味を失ってしまったのか。ま、いまさら語られても、遠い花火を見るようなもので、「ふーん」てなもんだけれど。相変わらず、中川いさみはグー。
3/18 情報の「目利き」になる!/日垣隆(ちくま新書) ★★★☆
怒れる作家・ジャーナリストのヒガキッキー。しかし、そのイカリは、常に冷静な姿勢と緻密な取材の積み重ねから生まれている。だから、軸がぶれないのね、ということがよおくわかる。もっとこの作者に注目していこう。惜しむらくは、どうしても皮肉な論調になってしまうところ。ぼくは嫌いじゃないけど、本質と別のところで毛嫌いするヒトも多いんじゃないか。
3/22 ブレイブ・ストーリー(上)(下)/宮部みゆき(角川書店) ★★★★
このヒトは何を書いてもホントウにうまいなあと思う。後段はストーリーが読めてしまうけれど、それどもぐいぐい読まされるし、時折「ううむ」と唸らされる。でもね、RPGはやめといた方がよかったんでない。「RPGを素材とした宮部ワールド」というよりも、「宮部みゆきが書いたRPG」なんだもんな。確信犯なんだろうけどね、RPGはRPGなのよね。何も宮部みゆきが書かなくてもいいんじゃないかなあ。テレビゲームから離れてかれこれ8年。読後感が、ファイナルファンタジーと「同種」の感動だった気がした。でね、とりあえず「長ぇよ」。
3/24 沖縄やぎ地獄/さとなお(角川文庫) ★★★★
3年ほど前に、出張で那覇を訪れた際、沖縄料理はあなどれんぞ、と密かにコーフンしたことがあった。んが、こんなにもワンダフルワールドだったとは知らなんだ。驚。それにしても、ほんとに「個人」でここまでやるか!同著者の「うまひゃひゃさぬきうどん」は大阪→香川への旅であったから、そうまで思わなかったが、大阪→沖縄まで同じテンションで攻めるすごさっつーか、凝り性っつーか、食いしん坊っつーか。ひょっとして出張?
3/29 57577 Go city, go city, city !/桝野浩一(角川文庫) ★★
ごめんなさい。これって相性の問題だと思う。エッセイは比較的おもしく読めたのだけれど、短歌はダメだ。考えオチみたいなのが特にダメ。「うつむいて考えごとをするたびに「とうとう」「否×」と答える陶器」とか。「とうとう」だけならまだしもね、「否×=INAX」って無理矢理だし。しかも、その結果が面白くないし。もちろん、「いいな」と思うものもあったんだけどね。「正しいハメ方はこうじゃないような気がする 何度やりなおしても」とか。

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