海森殿堂 2003. 6月ノミネート作品


6/2 死都日本/石黒輝(講談社) ★★★★
半分仕事がらみ(防災対策)で読んだんだけど、なんつーか、荒削りだけど面白いっつー見本のような小説だわよ。かなーり強引な物語の幹と、妙に緻密な枝葉とが、混ざり合ってんだがないんだかわかんないけど、とにかくイキオイだけはすげえの。平凡なタイトルと、後半のバタバタぶりがもったいないデス。最後の演説なんて「インデペンデンス・デイ」かよ、ってなもんでね。
6/7 汚名/多島斗志之(新潮社) ★★★★
B級パニック小説の後だったこともあって、無駄のない洒脱な文章にメロメロ。ミステリーとしての展開よりも、小説世界の空気感が素晴らしい。
6/8 毎月新聞/佐藤雅彦(毎日新聞社) ★★★★★
昔、このヒトの講演を聴いたことがあるのだけれど、講演自体がオドロキとコーフンに満ちたひとつのエンターテイメントになっていてひどく感動した覚えがある。この「毎月新聞」も、そんな著者の性分がぎゅうぎゅうに詰まっている。
6/8 ネットのおやつ/佐藤雅彦(マガジンハウス) ★★
面白くないわけじゃないけど、紙の漫画ではネットで見た時のインパンクトには全然かなわない。CD−ROM版を買うべきだったな。それにしても、「おかあさんと一緒」でやってる「あっという間劇場」はここから始まったんだってことを再確認。
6/8 同姓同名小説/松尾スズキ(ロッキングオン) ★★★★
読みながら思わず噴出してしまうことって、ありそうでなかなかないね。この著者の書くものはどちらかというと「ニヤリ」とすることが多いのだけれど、今回は、計6回噴出した。6回噴出すって、すげえことだ。ま、タイトルには裏切られた気分だし、部分的につまんないところもあったけど、間違いなく、今、必ず笑かしてくれる数少ないヒトだわね。
6/11 世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい/森達也(晶文社) ★★★★★
文章から立ち上がってくる著者の人物像は、相当「うざってえ」ヤツだ。くどいし、しつこいし、かなり短気。友達にはしたくない。でも、彼が念仏のように唱える「思考を停止させるな。そして、自覚しろ。」というメッセージは、強くぼくの心に響く。しかし、田中康夫といい、森達也といい、なんか行政の敵のようなヒトにばかり惹かれる。
6/11 現場主義の知的生産法/関満博(ちくま新書) ★★★★
帯に「山形浩生氏絶賛」とあったので買ってみたのだが、ヒネリのないタイトルに反して実に熱い本だった。しかし、学ぶべきは、行間ににじみでる「志」の強さだけではなく、戦略の実行性だ。熱い「志」だけではモノゴトは進まないし、表層的な戦略だけではヒトは動かない。両方が必要なのだ。脱帽。
6/16 ベロニカは死ぬことにした/パウロ・コエーリョ(角川文庫) ★★★☆
思ったほど突拍子もない話でもなく、哲学臭くもなく、純文学でもなく、普通に愉しめた。ただね、ラストはどうなの。ちょっと甘過ぎでないかい。それと、17歳のカルテの印象が強すぎたのか、途中からベロニカがアンジョリーナ・ジョリーになってしまって、頭の中の映像がそこだけ妙にクリア過ぎて困った。
6/21 彼女について知ることのすべて/佐藤正午(集英社) ★★★★
ちょっと構成が懲りすぎな感はあるけれども、ヒトによっては最後の数ページが効きくね。堪えるね。これってちっともいいことじゃないと思うけれど、うーむと唸っちまいますね。ちーっとも感情移入できない主人公もまたよし。しかし、著者の主人公(男)は、どうしてこうも、こうなんだろうか。
6/22 魚藍観音記/筒井康隆(新潮文庫) ★★★
筒井康隆といえば、中学時代のアイドルであったなあ。このヒトの文体がとにかく好きだった。エロくてグロいところも。表題作なんて、筒井節炸裂でちょっと鳥肌がビンビンにたった。あと愚息も。・・・ただ、それ以外の作品は、随分物足りなかった(短編集なのだ)。なんかいい風に枯れてる感じで。枯れてほしくないのよね。ちょっと旧作を読み返したい気分。
6/22 ベストセラーだけが本である/永江朗(筑摩書房) ★★★
本・書店・出版界を巡るコラム。我が故郷・宮崎は、書店も図書館もまったくない市町村が全体の3割を超えるらしい。ああ、そうかもしれん。ぼくが昔住んでいた村にも本屋がなかった。だからしょうがなく、学校の図書室にあったポプラ社の「伝記もの」とか「怪盗ルパンシリーズ」とかとかを読破してこんな大人になったのだ。幸か不幸か。そんな選択肢のない時代に比べれば、こんな田舎でも今の環境はまだまだマシだわね。
6/22 人生張ってます/中村うさぎ(小学館文庫) ★★★
岩井志麻子、西原理恵子、斎藤綾子らとの対談集。なんだか安直に作っている感じがあってちょっとヤなんだけど、まあ対談集なんて人選がすべてだかんな。面白いからオッケーか。それにしても、みんな業が深すぎる。セックスは断らないだの、借金は踏み倒すものだとか。こーゆーオンナは遠くから見ているだけの方が楽しい。
6/27 間取りの手帖/佐藤和歌子(リトル・モア) ★★
盲点。そうきたか。まーとにかく着想にパチパチパチだ。コメントもグーだし、コラムもナイス。実は、装丁なんかも結構凝ってる。すげえ。それでーも、主婦としては納得できないお値段だわ。\950!(主婦じゃないのでギリギリ許す)。
6/27 るきさん/高野文子(ちくま文庫) ★★★☆
北村薫・文庫本の表紙絵でしか知らなかった高野文子を初体験。「絵が好きな漫画家の漫画はやっぱり好き」の法則を再確認。ひょうひょう、あるいはまったりとしていて、ほんの少しだけかわいらしい毒もあり。とても「大人な漫画」だ。
6/28 七回死んだ男/西澤保彦(講談社文庫) ★★★
たまーに、「本格もの」が読みたくなる。この本は北上次郎が絶賛していたもの。うん。確かに面白い。奇想天外で謎解きもまあまあスッキリ。んが。うまくいえないけれど、最後の最後で作者が仕掛けた罠にようやく気づいて「うわあああ、そうだったのかッ!」と唸るのが「本格」を読む醍醐味だと思うのだが、その点がちょと足りないかったかなあ。
6/28 日々にぎりこぷし/にぎりこぷし(バジリコ) ★★
大好きなサイト「PBI!WEB」の単行本化。モノクロなんてもったいないなー。収録されたエッセイもそれなりに面白いのだが、絵日記だけの方が面白さが際立ったハズ。惜しい。
6/29 リレキショ/中村航(河出書房新社) ★★★★☆
帯に大文字で「文藝賞受賞作」と書いてあったのだが、それよりも、選考委員・斎藤美奈子、田中康夫・・・ってところに惹かれて購入。このふたりが選んだものなら・・・やはり、ビンゴ。爽やかな文体。小さな笑い。そして、この空気感が好き。あと一歩ですごい嫌味な小説になるのに、しっかりと留まっているところがクール。
6/29 欲望の迷路/本橋信宏(宝島社) ★★
シロウト派なぼくにとって、お風俗の世界は興味津々なワンダーワールド☆ んでもね、この手の「体験ルポ」を読む限りにおいては、エッチに3万とか5万とか、はたまた10万とか払う感覚がどうにもわからない。別にぼく自身、そんなに恵まれた「エロ環境」じゃないんだけどさ、昔から。ひたすら「へえ〜」と感心しながら読むの図。(でもときどきコーフン)
6/30 愛のモンダイ/素樹文生(メディア・ファクトリー) ★★★
タイトルが・・・。以前からこの人のHP「モトギ・ドットコム」が好きで(どうでもいいことだけど、ここのアドレスは、www.motogi.com、ではない)、どきどきチェックしているのだけれど、なんとも「だるん」とした雰囲気が好きなのだ。文体、というより行間の空気感というか。そんなところがちょっとクセになる感じ。エッセイもいい感じよ。だるるん。

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